虹色のラブレター
彼女の家の前に着くと、台所の窓から部屋の明かりが点いていることがわかった。
それを見た瞬間、僕の興奮は一気に最高点に達した。
僕は千鶴が居なくなったあの日から、彼女がいつかここに帰ってくることを信じて、何度も足を運んでいた。
その度に、千鶴の存在がここにないことに絶望していた。
だけど、この日は違う。
僕は千鶴からのメッセージを受け取ってここに来たわけだし、実際、部屋には明かりが点いている。
千鶴の存在が今ここにある。
確信を持ってそうと言い切れるわけではないが、僕のポケベルにメッセージが入っていたことは確かなことだ。
僕の興奮は次第に緊張へと変わってきた。
玄関の前に立って、そこからしばらく動けなかった。
千鶴がここに居る。
もうすぐ再会できる。
そう考えるだけで、僕の頭は真っ白になった。
この日まで、僕は僕なりの再会のシナリオをいろいろと考えていたのだが、その欠片を思い出すのも一苦労だった。
冬なのに掌に汗をかいて、緊張のあまり上手く呼吸が出来ない。
ここまでくると、もうシナリオなんてどうでもよくなった。
とにかく千鶴に会いたかった、ずっと待っていた。そう言おう。
そして、あの日、彼女に伝えることが出来なかった僕の気持ちを伝えよう。そんなことを考えながら、僕は千鶴の家のブザーを鳴らした。