虹色のラブレター
『うん、アイスコーヒー……アメリカンで』
そう言って顔を上げた僕は、彼女と目を合わせ微笑んだ。
「あ、あの……俺も同じで」
貴久はそんな僕たちに遠慮するように、小さな声を出した。
それを聞いた彼女は、慣れた手付きで伝票に文字を書き込み、「ごゆっくり」と言って僕たちのテーブルからその伝票だけを置いて離れていった。
貴久はそんな僕たちのやりとりを見て、前までとは明らかに違う様子に何か気付いているようだった。
彼女の姿が厨房に消えたのを確認してから、彼は迷わず僕に問いかけてきた。
「お前、あの人と……何?」
『何って?』
僕は動揺することもなく、広げていた雑誌に視線を落とした。
「だから……」
『……だから?』
「だから、もしかして……付き合ってる?」
『ううん、そんなんじゃないけど?』
「でも……なんか怪しかったぞ?」
『別に怪しくはないけど。最近……よく会ったりしてるんだ』
「それって……付き合ってるってことじゃん」
『いやだから……そんなんじゃないってば。ご飯行ったり、カラオケ行ったりしてるだけだよ?』
僕はポケットから出したタバコに火をつけた。
彼もつられてタバコを取り出した。
それからお互いにフーと一息つく間隔があった。
その後、彼は続けた。
「だからそれを付き合ってるっていうんだよ」
『なんで?……ただの友達だってば』