虹色のラブレター
* 4 *
そのきっかけは、夜中に僕とドライブしている途中で美貴が話してきた、元彼との旅行の話だった。
「……だからそんなボロボロの車で行ったの!!もう死ぬかと思った」
『そんなにやばかったの?その車……』
「うん、やばかった……」
彼女は器用に白目をむいて見せた。
僕は続けて聞いた。
『どこまで行ったの?結構遠く?』
「××県……」
『まじで!?よく行って帰ってこれたな……』
美貴が言う××県というのは、ここから二つも三つも隣の県だ。距離にして600kmくらいは離れていた。
彼女の話では、元彼の壊れそうだった車でそこまで行って帰ってきた……というのだ。
おまけに元々あまり大きくなかった車の中には荷物がいっぱいで、移動中は落ち着いて座ってられなかったと言う。
その日は僕の一週間の夏期休暇の初日で、二人はあてもなくドライブを楽しんでいた。
彼女もそれを知っていた。
「ねぇ……」
『うん?』
「この車ならゆっくり行けるのにね」
『たぶん……事故らなければね』
冗談っぽく言うと彼女はいつものように、あははと声を出して笑った。
「この車で……運転するのは智だよね?」
それなら事故るのも一緒だよ?というような目で彼女はそう言った。
『保証はないよ?』
そう言って僕はにっこりほほ笑んだ。