虹色のラブレター
ご飯を食べ終わった後、僕たちはこの初めて来たサービスエリアの中を散歩した。
季節は真夏だったけど、真夜中で、しかも山中にあるこのサービスエリアの気温は半袖だと少し寒いくらい涼しかった。
サービスエリアというのは基本的に、ご飯を食べたりトイレに行ったりとドライバーが休憩をする場所だ。
だから、この広い敷地内の所どころにテーブルやら椅子やらベンチやらが置いてある。
僕たちはその中でもあまり目立たない場所を選んで、そこにあったベンチに並んで座った。
「星が近い……」
美貴は夜空を見上げながらそう言った。
『ここは山の中だからね』
「山って高いから星が近くに見えるの?」
あまりに単純な……美貴らしい解釈の仕方が可笑しくて、僕は笑った。
『そうじゃないよ。周りが暗いから、普段街からじゃ見えない暗い小さい星でも見えてるからなんだ』
美貴は目を丸くして首を傾げた。
どうやら、さっぱり意味が分かっていないらしい。
『ほら、遠くの物って大きくないと見えないだろ?でも近付くと小さい物でも見えるじゃん?それと同じで、小さい星が見えてるから空が近く感じるんだよ。』
「そうなんだ……」
その一言だけ言って彼女は頬笑み、そして、夜空を見上げたまま口を閉ざした。
美貴は何か言おうとしていた。
でも、彼女は迷っているようだった。
その様子には気付いていたが、僕もしばらく黙ったまま美貴と同じように夜空を見上げて、彼女の次の言葉を待った。