虹色のラブレター
「……千鶴」
彼女がその長い沈黙を破って口にしたのはその言葉だった。
僕は一瞬ドキッとした。
まさかこの場面で、彼女の口からその名前が出てくるとは思ってもみなかった。
小さく言った言葉だったが、僕にははっきりと聞こえていた。
でも、僕は聞き返した。
その言葉にドキッとした自分に少しの猶予が欲しかった。
『え?なんて?』
「千鶴って……かわいいよね」
『え?う、うん……そうだね』
「私なんかとは全然違う……」
『そんなことないよ』
僕はすぐに答えた。
それは本当の気持ちだったから、彼女がそんなことを気にしていることを迷わず否定したかった。
「いいよ、わかってるから」
彼女は苦笑いで言った。
『ほんとにそんなことないって!!僕は美貴さんのいい所いっぱい知ってるし』
僕がそう言うと、彼女はやっぱりこの時も、あははと声を出して笑った。
でも、彼女はまだ夜空をずっと見上げていた。
そんな彼女に僕は聞いた。
『なんでずっと星を見上げてるの?』
「だって、流れ星って願いが叶うんでしょ?私はそのチャンスを逃したくないの」
そう言って彼女は夜空に笑みを浮かべていた。
美貴さんの願いって何なんだろう?
一瞬そんなことを考えてしまったけど、僕は深く考えない様にした。
そして、僕も彼女と同じように星を見上げて一言返した。
『……そうだね』