虹色のラブレター
車に戻った時には、もうすでに日付が変わっていた。
外は肌寒いくらいだったが、車内の気温はエアコンをつけなくてもいいくらいだった。
ここで一晩を過ごして、明日はまた××県に向かって車を走らせる。
僕たちはそれぞれ、車のシートを丁度いいくらいに倒して、低くて殺風景な天井を見上げた。
旅行になんて行くつもりじゃなかったから、それに合った用意を何もしていなかった僕たちは、ただ目を瞑るしかなかった。
狭くて静かな空間の中では、すぐ傍にいる彼女と自分の息づかいだけが聞こえ、それ以外は高速道路を行き交う車の音だけだった。
『大丈夫?』
「うん、全然平気」
『明日は目的地まで一気に走ろう』
「うん、ごめんね。私、運転できなくて……」
『いいよ、そんなこと、気にしなくて』
「うん……ありがとう」
『あ……明日のバイトは?』
「明日は元々休みなの」
『そっか……じゃ、いいや、おやすみ』
「うん、おやすみ……」
美貴は慣れない車でなかなか寝付けなかったのか、僕のすぐ隣で何度かゴソゴソと体勢を変えてるようだった。
僕は今までに何度か車で寝たことがあった。だから寝心地が悪いという訳ではなかったが、さすがにこの日はなかなか寝付けなかった。
ずいぶんと時間が経って、ようやく僕が夢に落ちかけた頃、彼女の少しかすれた声が聞こえた。
「流れ星見えた?」
『ううん、見えなかった』
続けて僕は訊いた。
『見えたの?』
「うん、願い事叶うかな……」
『叶うよ、きっと』
「ほんと!?よかった……じゃ、おやすみなさいっ」
彼女はもう一度ゴソッと音を立てて、体勢を変えたようだった。
『うん、おやすみ……』