虹色のラブレター
「どうしたの?」
その言葉と視線にハッとした僕は、なるべく平然を装って答えた。
『え!?い、いや……何も』
僕は無意識にポケットから取り出していたタバコに手をやりながら言った。
『美味しそうに飲むな~と思ってさ』
「ほんとに美味しいよ、やっぱり智も飲む?」
そう言って彼女は僕にワインのグラスを近づけてきた。
果物のいい香りがした。
その匂いに惹かれ、これなら飲めそうと思った僕はそのワインを一口飲んでみた。
一瞬で口の中に広がるワインの味は、今まで味わったことがないくらい美味しかった。
『美味しい……』
思わずそんな言葉が出た。
「でしょ?」
『ワインってこんなに美味しいんだ……これなら僕でも飲めそう』
「じゃ、注文する?」
『うん』
この時、美貴が注文していたワインのアルコールが、僕の予想を遙かに上回るほどきついものだったとは全然知らなかった。