虹色のラブレター
テーブルにパスタが二つ並べられた。
それは僕の注文だったのだが、それを聞いた彼女も僕と同じものを注文したから、結局テーブルには同じものが二つ並ぶことになった。
見た目も別にこれといって特徴もなく、たぶんどこにでもあるような普通のミートソースのパスタだったが、その味は特別なものに感じられた。
それから僕と彼女は食べることに専念し、たまに僕と目が合うと彼女はニコッと笑みを浮かべたりした。
部屋に戻った時、時間はもう既に11時を回っていた。
着替えのない僕たちは仕方なく、そのままの格好でそれぞれのベッドに入った。
かなり気持ち悪かったが、そんなことよりも僕がもっと気持ち悪かったのは気分だった。
レストランで飲んだワインが今頃になって効いてきたのだ。
僕はベッドに横になるなり、ハァ……と一つ大きな息を吐いた。
見上げた天井がグルグルと回っているように見えた。
余計に気分が悪くなってしまいそうだったので僕は目を閉じた。
美貴がそんな僕の様子に気付いたのか、ベッドから立ち上がり洗面所の方に歩いて行ったようだった。
「大丈夫?ワイン…少しにしとけばよかったね」
横になったまま目を開くと、彼女は「私のせいだね」というような表情で僕にコップを差し出していた。
僕はベッドから体を起こし、美貴から水の入ったコップを受け取った。
『大丈夫…ありがとう』
そう言って僕はその水を一気に飲み干した。
「いいのよ、横になってて。眠ったら酔いは冷めると思うし」
うんと頷き、僕はもう一度そのままベッドで横になり瞼を閉じた。
ベッドのきしむ音がして、少しベッドが傾いた。
彼女がベッドに座ったようだった。
それから随分と長い間、静かな時間が流れた。
寝返りをうつのにも気を遣ってしまうくらい静かだった。
僕は彼女の言う通り、眠る努力をしていた。
気分が悪いというのもあったが、この静けさが逆に緊張を誘い、僕はなかなか寝付くことが出来なかった。
そんな時、聞こえてきたのは美貴のズズッと鼻をすする音だった。