虹色のラブレター
深夜の2時を回った頃、僕の車は地元に着いた。
僕は彼女の家の近くの公園の駐車場に車を停めた。
彼女はいつもこの駐車場で車を降り、そこから歩いて帰るのが僕たちのお決まりのパターンだった。
彼女の家は公園のすぐ傍だった。
美貴は気付かずに眠り続けていた。
僕はしばらくそんな彼女の寝顔を見つめながら、タバコを銜えて窓を全開に開けた。
季節は真夏だったが、爽やかな風が吹き抜けてきた。
「智?……ここは?」
彼女の力のない声が聞こえた。
『おはよう、美貴さん』
美貴は少し腰を浮かせ、車の中から辺りを見回し今居る場所を確かめていた。
「公園?もう着いたの?」
僕は灰皿を手に取り、タバコを消しながら答えた。
『うん、よく眠れた?』
彼女はようやく今の状況が理解できたのか、驚いたように口に手を当て、恥ずかしそうな表情を見せた。
「ごめん……運転してもらってるのに寝ちゃって……」
彼女はちょっと肩をすくめて小さな声で言った。
『ううん、いいよ。美貴さんこそ明日バイトなのに……』
「それは大丈夫!気にしないで……それよりも」
そう言って彼女は助手席のシートにきちんと座り直した。
「……3日間付き合ってくれてありがとう。すごく楽しかった!」
『いえいえ、こちらこそ……ありがとうございました』
僕たちはお互いにシートに座ったまま頭を下げた。
彼女は一度僕と目を合わせた後、微笑んで後部座席に置いてあった鞄を取った。