虹色のラブレター
「じゃ、協力してくれよ!!」
『マジで?僕は冗談のつもりで言ったんだけど?お前……あの子のこと見たの今日が初めてだよ?』
僕が顔を上げると貴久はその独特の笑顔を見せていた。
「一目惚れだな……」
『お前……なんでいつもそう軽いんだよ』
「軽くないって!!本気だって!!」
『まぁ……僕は別にどっちでもいいけど……』
その時、アイスコーヒーを二つ乗せたトレーを慣れない手つきで持ちながら、僕たちのテーブルに近付いて来る彼女(新しいバイトの子)の姿が見えた。
やっぱり小さくて華奢な彼女が着けているそのエプロンは、ここから見てもかなり大きく見えた。
『来たよ、あの子』
「ほ、ほんとに?」
『うん……たぶん』
「な、名前聞いてくれよ!!」
『は!?自分で聞けよ!!』
「頼む!!な!!今日の分、俺がおごるからっ」
貴久はそう言って、必死で両手を合わせてきた。
気持ちはよくわかった……僕だって、もしこれが自分のことだったら名前なんてきっかけがないと聞き辛い……。
『わ、わかったよ……』
僕はタバコを灰皿で押し消して、彼女を待ち構えた。