虹色のラブレター
* 7 *
その日は僕と貴久の提案通りカラオケに行くことになった。
夜20時にボーリング場で待ち合わせ、僕が車を出して目的のカラオケボックスまで移動しようということになった。
「場所は?」
貴久が助手席からちょっと不安そうに僕に訊いた。
『任せとけって。そんなに遠くには行かないから』
どこのカラオケボックスに行くかはもう決めてあった。
そこは僕自身も行ったことがないところだった。
おそらく貴久も美貴も千鶴も行ったことがないだろう。
そこを選んだ理由はそれだった。
どうせなら誰も行ったことがない場所の方が新鮮でいい。
ボーリング場から目的地までは車で30分程度だった。
いつもなら黙っていられないはずの貴久が、その日の車の中ではほとんど口を開かなかった。
口を開かない代わりに彼のタバコの本数が増えていた。
その様子からして彼は相当緊張していたのだろう。
美貴と千鶴は後ろで何やら話しながら、僕たちが知らないような話題で盛り上がっているようだった。
『今日は上手くやれよ』
僕は貴久にかろうじで聞こえるくらい小さな声で声をかけた。
「わかってるって、ありがとうな」
しばらく片側3車線もある大きな国道を走って行くと華やかな"カラオケ"の看板が見えてきた。
僕は指示器を点滅させて車をそこに入れた。
車を駐車スペースに停めてから僕は3人に声をかけた。
『ここでいい?』
3人は頷いて車を降りていった。
目的はカラオケだったのだからここでいいのは当たり前のことだった。