虹色のラブレター
『こっちに出てきたのは?……彼が?』
「うん、一緒に住まないか?って言ってくれたから」
僕は胸が締めつけられるのを感じていた。
『そう……でも暴力がひどいって』
「なんか仕事が上手くいってないっていうか……ずっとイライラしてて……本当はそんなことする人じゃないんだけどな……」
僕の胸はさらに締めつけられた。
この感覚を改めて知った僕は、彼女が言った「もし私が田舎に帰ったら……」が本当になればいいのに……とも思った。
「智は?」
『え?』
「仕事のこと……」
『ああ……忙しいけど、高校の時からずっとバイトしてた仕事だし』
「そうなんだ」
『うん、千鶴は?何かある?やりたいこととか』
「私は……」
千鶴は言いかけて少し恥ずかしそうな仕草を見せた。
そんな表情を見ると余計に聞きたくなる。
「何?何?」と僕は彼女の口元に耳を近付けて促した。
「ええっと……似合ってないとか思われるかもしれないけど……」
『うん』
「ああ、やっぱり……」
『何?教えてくれないなら喫茶店で、みんなに千鶴が学生だってばらすよ?』
「えぇ!?ほんとに言わないとダメ?」
頬をピンク色に染めて、上目使いで僕を見る。
それは僕の知らなかった彼女の新しい一面でもあった。
そしてまた僕は、そんな彼女にドキッとさせられるのだ。
『うん、さぁ言って』
少しの沈黙の後、彼女が言った。
「うんと……看護婦さんになりたいの」
彼女の声は小さかった。
『いいじゃん!!それすごくいい!!』
僕は思わず大きな声を出した。
確かに、見た目はいつも男の子っぽい服装をしていて、一見似合ってないように見えるかもしれない。
でもこの時の僕は、理由はわからなかったけど千鶴にはピッタリだと思った。