虹色のラブレター
「そう?……かな」
千鶴には僕のその反応が予想外だったのか、笑うことも忘れているようだった。
「あ、でも誰にも言っちゃダメだよ?」
『何で?』
「だって、恥ずかしいじゃない……」
『そう?』
「そうだよ」
『何て言うか……千鶴にはピッタリだと思うけどな』
そう言うと、彼女は疑うような目で僕のことを眺めた。
「本当にそう思ってる?」
『うん、もちろん!!』
彼女は俯いて笑顔を隠した。
そうやって準備を整えてから、顔を上げてもう一度微笑んだ。
「嬉しい……あ、そうだ」
千鶴は大切なことを思い出したかのように、急いで鞄を開けてそこに手を入れた。
ゴソゴソと探り、そこから彼女が取り出したのはB6サイズくらいの小さな赤い手帳だった。
ちょっと待ってね、と言って彼女は慣れた手つきで手帳を膝の上で広げ、何かを書き始めた。
手帳に文字を書き込む彼女の目は真剣だった。
僕はそんな彼女から目が離せなくなった。
僕の視線に気づいた彼女は一度手を止めて、チラッと僕と視線を合わせた。
そして、またすぐ視線を手帳に戻して続きを書き始めた。
「そんな見ないで。たいしたこと書いてないから」
うん、と言って一度目を逸らしたけど、僕はまたそんな彼女の横顔を、今度は彼女に気付かれないように見ていた。
「ほんとに、見ないでって」
彼女は手を止めず、表情も変えずにそう言った。