は?何それおいしいの?
桃の食べる姿はいつ見ても綺麗だ。
箸の使い方だって綺麗だし姿勢もピンと背筋を伸ばしている。
テーブルに肘もつけないし、お茶碗もちゃんと持って食べるし、くわえ箸なんかの無作法もしない。食べるときのお手本みたいな人だ。
会話らしい会話もなく、黙々と食べ進めていくけど気まずいことはない。
長年の幼馴染みだし、こういうのは逆に気を遣わなくていいから落ちつく。
「あ、そういえば明日の夜から、桃のとこおばさんもおじさんもいないって聞いたんだけど」
「あー、そういえば…」
そんなこと言ってたな、とぼんやり思い出している様子。
なぜ家族じゃない家の事情を当人よりもあたしが知っているんだ。
それはあたしとおばさんがよくメールをする間柄だからである。
「おばさんにごはんのこと頼まれたんだけど、お母さんに言っておこうか?」
「ん、頼む」
「りょーかい。ついでに食べたいものあったらまた言って」
お母さんは桃のこと大好き人間だから、多分そのリクエストは通ると思う。
あたしか弟が「今日はハンバーグがいい」と言っても桃が「カレーが食べたい」と言えばお母さんはそっちをとるに違いない。それはもう確実に。
考えとく、と言って桃は最後の1口を食べた。
あたしも食べ終わり、2人でいっしょに教室に戻ると、なしのんがこちらに向かって手を振っていた。
そちらに行ってみると、なしのんとは別に知らない女の子がいて。んー、見たことない子だ。
「なしのんの友達?」
「友達と言うより……知りあい?」