は?何それおいしいの?



なぜ疑問。それでなんの用事だろうかと首を傾げたときにバチリとその子と視線があった。


……なんだろう。一瞬敵意を感じた。


かと思えばやけに熱っぽい視線が後ろに向かっていて「あぁ、またか」と思ってしまった。


なしのんに目を向けると苦笑を返される。あはは、なしのんも大変だな。



「じゃああたしはこれで」



あたしには関係ない(と思った)ので、クルリとその子となしのんに背を向けて先に教室に入る。


桃もあたしの後ろにいてついてきたけど声がかかった。言うまでもなくあの女の子である。



あーやっぱり告白、か。


この瞬間はなんとも複雑な心境ではあるけど、せっかく来てくれた子を無下にするのも心苦しいのでピタリと足を止めると桃の足も止まった。


まるで親鳥の後ろを歩いている雛鳥だ。



「桃、呼ばれてるよ」


「…、ん?」



今気づいたとばかりに顔をあげて首を傾げる桃。ちょっとは自分の周りにも気を配ろうよ。



「……何?」


「あ、そのっ……」



顔を赤らめてかわいらしく恥じらう姿に「あたしには到底無理だわー」と内心乾いた笑いをこぼす。


こんなのあたしがしたら気持ち悪いの一言で済まされる。



「桃、その雑誌あたしに貸して?」


「なんで」


「その子、桃に話あるみたいだし」



はい、と手を出すけどあからさまに嫌だと書いてある顔だ。



「別に持ったままでもいいじゃん」


「ダーメ。それ持ってたら人の話ちゃんと聞かないでしょ?」





< 13 / 84 >

この作品をシェア

pagetop