は?何それおいしいの?



いいから貸しなさいと半ば無理矢理奪う。


自覚はあるのか、無理矢理にもかかわらず大きなため息をつかれただけで済んだ。よかった。


授業までには帰ってきてよ?と一応の言葉を残して教室に入る。





「……ハナ」




いきなり聞こえた後ろからの声にドキリと一瞬心臓が跳ねた。


それに気づかせないように振り向くと桃がこちらをじっと見ていて。



「何?」


「……肉じゃがと筍ごはんとなめこのお味噌汁が食べたい」



いきなりなんだと目を2、3度しばたかせて理解する。多分さっき話してたやつだ。


にしては随分細かい……もしかして今までずっとそれ考えてたんだろうか。さすが桃。



「あー、なめこのお味噌汁は昨日の夕食に出てたので、せめてお味噌汁は大根で」


「ん、いいよ」



よしっ、と小さくガッツポーズをしてしまった。だってなんか……桃に勝ったような気がしたんだもん。



「りょーかい。うんと気合い入れて作るね」



多分うちのお母さんが。


伝えられて満足したのか、桃はさっきの子といっしょに廊下の角に消えた。


あたしも席につき、そのあとをなぜか興奮気味のなしのんがついてきてしゃがみこみ、あたしの机に顎を乗せる。



「ねぇねぇ、何さっきのやり取り!めっちゃ新婚っぽかったんだけど!!」


「どこが」



新婚て……お付き合いのカップル状態をすっ飛ばして結婚て。



「さっきのは別に……明日から桃のとこ、両親が留守みたいだからうちでごはん食べるんだけど、その献立は何がいいか考えといてって言った答えがたまたまさっきってだけだよ」


「ごはん…みーなの家でっ?」


「当たり前でしょ。おじさんもおばさんもよく仕事の都合で出かけることが多いからね。昔からそのときは家が近いあたしたちにごはんのこととかお願いして行くの」





< 14 / 84 >

この作品をシェア

pagetop