は?何それおいしいの?
でもそんなことに目の前の女子が気づくはずもなく、話してくれたことが嬉しいのかポッと頬を赤くした。
「にゅ、入学してからずっと見てました!あたしと、付き合って下さいっ」
シーンと静まる周り。結末を想像してかゴクリとどこかで息を飲む音も聞こえた。
頬を染めて、すがるように上目遣いで桃を見つめ、小さな体は緊張からか震えている。
こんなかわいい子からの告白なら好きじゃなくても受け入れる男子がほとんどだと思う。
そう考えるのはあたしだけでなく、ここにいる人たち全員だろう。
でも、自分で考えたことの常識と桃をいっしょにしてはいけない。
あたしはそれをよく知っている。
何せ桃の興味のあることといえば、それは『食』もしくは『おいしいもの』なのだから。
案の定、
「なんで?」
という意味不明な返答をした。
ポカーンとしたのは告白をした女子だけじゃないと思う。
周りの人も意味が分からなかったに違いない。
「なんでアンタが俺をずっと見てたってだけで付き合わないといけないの」
意味分かんない、と呟く桃だけど、こっちからしたら桃のが意味分かんない。
ただ普通と桃の思考回路では少しズレがあることに、幸いあたしは対応できるので少し手伝うことにする。