は?何それおいしいの?
「……桃にぃって食べ物以外にも関心とかあったんだ」
「俺が関心持つのは『おいしいもの』だから」
うわ、けろりと返された。
てかサラリと流しちゃったけど、好きな女が隣って、思い当たるの1人しかいない。前からそうかなーとは思ってたけど、そういうの興味なさそうだから違うって思ってたのにやっぱりか。
そう思うと前から抱えていた矛盾がすべて解決するのだから不思議だ。
「ほーんと、ハナってば見る度においしそうで困るよねぇ」
クスリと笑う桃にぃに思わずギョッとした。それって一歩間違えば人食主義者……
でもそんな俺には目もくれず、見たこともないような恍惚とした表情でその瞳は姉ちゃんを映している。
「早く食べ頃にならないかなー。きっと死ぬほど柔らかくて甘くておいしいんだろうね」
楽しみだなー、とクスクス笑う桃にぃ。このときの桃にぃは見たことないぐらいに色っぽかった。
このとき程姉ちゃんに頑張れとエールを送ったことはないと思う。そしてあとにも先にもこれ1回ポッキリだと思ってた。
でも今1度姉ちゃんにエールを送ろうと思う。だって今の桃にぃってちょーっと加減効かなさそうだし。
桃にぃに食べられるのは、まぁ昔っから逃れられない運命として黙認するとしても、食べ尽くされないようには祈っておこう。
そして俺は桃にぃからの伝言を伝えるためにお袋に連絡したのだった。
Fin.