は?何それおいしいの?
このままだと授業進まないなぁ、ということで良心を働かせて桃を静めたのがあたし。
それからなぜか桃の隣があたしの定位置になってしまった。別にいいけど。
そもそも桃が怒ったり喜んだりするのって食べ物に関してだけだから、それにさえ触れなければお昼寝中の牛並みにおとなしいと思うんだけどな。
ガラリと教室のドアが開いて先生が入ってくる。
いつものように出欠をとるときでさえ、桃の名前を先生が呼んだあとにもう1度あたしが名前を呼ぶ。
じゃないとこいつ反応しないんだよね。
反応したところで「んー」なんだけど。
そこは先生も諦めているみたい。賢明な判断だと思う。
出欠確認した先生は早々に教室を出ていき、教室はざわめきを取り戻した。
「みーなっ、おっはー!」
「おはよ」
朝からテンション高く抱きついてきたのは高校から仲良くなった梨野 由衣(なしの ゆい)。
キラキラの金髪と完璧な容姿、そして常時テンションが高いのが特徴だ。
ちなみにここの高校は金髪禁止だが「これはわたしのアイデンティティーよ!」とやめる気配はサラサラない。
これで成績優秀、しかも模試でも常に上位なのだから、ヘタに言って機嫌を損ねられてもいけないと先生も思っているらしい。
「今日も仲良く登校してたねっ」
「……仲良く、かなぁ?」
いっしょに登校はしてたけどさ。仲良くは……見えるか?
「仲良くでしょ。袖なんか掴んじゃってぇ〜」
「そりゃ転ばれても困るし」
それ以上の深い意味なんてないんだけど。