ソウルメイト -彼女のおまじないは悪!?-
(おとなしい私は嫌われる。つらいけど仕方ないよね。女子達に私のことあんな風に聞いたら、さすがにエモリエル君ももう話しかけてこないよ。よかった)
そう思っていた永愛は、次の瞬間、耳を疑った。
「そうでしょうか?話すのが無駄な人などいないと思います」
エモリエルは穏やかに言った。女子達だけでなく永愛もあっけにとられたが、すぐに彼女達は口を開いた。
「エモリエル君って、誰にでも平等なんだ!すごいね。でも、その子彼氏いるからあんまり話さない方がいいよっ」
「そうでしたか。それは知りませんでした。えっと……永愛さん、軽々しく声をかけてしまいすみませんでした。気分を悪くしたのなら謝ります」
永愛の胸元についた名札を見て、エモリエルは頭を下げる。永愛は恐縮した。
その様子が面白くなかった女子達は、こらえきれず永愛にきつい言葉を投げた。
「エモリエル君は悪くないよ!ってか、無口なクセに色んな男にいい顔しすぎ!秋良君だけじゃなくエモリエル君までさ。どうやって秋良君と付き合ったの?ま、どうせ秋良君も本気じゃないだろうけど。地味なクセに彼女面?似合ってないって気付けっての。皆そう言ってるし!」
秋良宗に関することで面と向かってそこまできついことを言われたのは初めてだった。興味本位で話を聞いていたクラスの生徒達は、男女問わず楽しげに笑った。
「うわ、きっつー!ぎゃははは!」
「面白いな!もっと言って〜」
「俺も、秋良は遊びだと思うぜ〜」
永愛の全身からは、すっと血が引いていくようだった。暑いのに、冷える。
(皆、秋良君と私のことをそんな風に思ってたんだ……。何か言われてるのはうすうす感じてたけど……。やっぱり傷付くなぁ。悲しいよ……。でも、泣いたらダメ!)
両手を強く握りしめることで、永愛は涙をこらえた。
苛立ちをあらわに席を立ったのは、海堂瑞穂だった。
「皆が言ってる?俺は言ってないし興味もない。自分の味方増やすために勝手に周りの人間巻き込むのやめてくれる?迷惑。気分悪い」
クールな一匹狼、海堂瑞穂の言葉は、実際の声以上に教室に響いた。そして、泣きそうだった永愛の胸にもあたたかなものを灯した。
(海堂君、私のことかばってくれた?キーホルダーを拾ってくれた時のお礼もまだできてないのに……)
ぽかんとした顔をするクラスメイト達にかまうことなく、海堂瑞穂は教室を出て行った。
「……私も彼と同意見です」
エモリエルが再び口を開いた。
「私は永愛さんのことをほとんど知りませんが、彼女に恋愛する資格がないとは思いませんし、彼女の相手がいい加減な気持ちで永愛さんと付き合っているとも思いません」
不満げに次のセリフを探す女子達には目もくれず、エモリエルは永愛の手を取った。
「一緒に彼を追いかけましょう」
「っ……!」
(私!?)
抵抗することもできず、かといって堂々と納得もできず、永愛は弱々しくうなずいた。