ソウルメイト -彼女のおまじないは悪!?-
いなみは興味なさげに言った。
「付き合ってる彼女が他の男子と帰るのが不満?そんなとこで見張ってないで本人にそう言えばいいのに」
「そんな、別に不満なんてないよ。彼氏だからって永愛ちゃんの人間関係に口出しするのも、ね」
「優等生が染みついてるね。誰にでもいい顔して、楽しい?」
「そんなつもりないんだけどな」
「ふーん。ま、いっけど。私には関係ないし」
いなみのこういうところが苦手なのだ。宗が最も隠しておきたい本性を、彼女だけは見透かしている。そんな気がした。
気持ちを押し隠し、宗はいなみに笑顔を向けた。
「バイバイ。琴坂さん」
「……私に愛想良くして、何か得ある?」
「損得で動いてないよ」
「アンタほど損得勘定って言葉が似合う奴いないでしょ」
「ははは……。琴坂さんはそう思ってるんだ」
「……」
白けた目をして、いなみは昇降口から出て行った。宗はどっと疲れを覚えた。
(うざいな。どいつもこいつも好き勝手しやがって……)
もっと昔は、自然に優しくふるまえていたはずなのに、いつの頃からか、宗の言動は偽りへと変わっていた。
永愛と関わったことをきっかけに、彼の精神バランスは崩れつつある。
宗がどんな心持ちでいるか知るよしもないまま、永愛はエモリエルや瑞穂と公園に来ていた。
通学路の中間辺りにあるこの公園は学校のグラウンドの半分ほどの広さで、すべり台やブランコがある。
植木に沿って並んだベンチに永愛を座らせ、エモリエルが言った。夏の夕日が汗を流させる。
「ここは暑いですし私のアパートに来てもらおうとも思ったのですが、永愛さんの自宅から逆方向になってしまうので、ここでお話したいと思います。もう少しお付き合い下さい」
「それはいいけど……。海堂君の家のそばで一人暮らししてるって本当なんだね。中学生なのにすごいね」
「先ほども言いましたが、任務のために私はこの世界に来ました。それに、元々一人暮らしですから何てことはありません」
ベンチには座らず立ったまま、エモリエルは穏やかに永愛を見つめた。エモリエルの隣に立つ瑞穂は、
「待って。エモリエルの探してる人って本当に渡辺さんなの?」
と、エモリエルの言葉を止める。
「…残念ながら間違いありません」
「……」
気遣わしげな視線を永愛に向け、瑞穂は悔しげにうつむく。エモリエルは話しはじめた。
「今から話すことは、永愛さんにとって信じがたいことかもしれませんが、まぎれもない真実です。そういう心がまえで聞いてもらえますか?」
「う、うん!分かったよっ」
心して聞こう!永愛の背筋はピンと伸びた。
「この宇宙は、私の所属する組織・ABU対策室によっていくつもの区画に分けられ監視されています。地球の位置するここ一帯はA区画に該当します。そして私はJ区画に存在する惑星から来ました。その惑星は、地球から観測されないほど遠くにあるので、詳しい説明は省きますね」