ソウルメイト -彼女のおまじないは悪!?-
永愛は、これまで使ったおまじないのことを思い出した。
緊張せずに人と話すためのおまじない。テストで実力を発揮できるおまじない。体育祭で力を出せるおまじない。
おまじないとは、身近で入手できる小物を使って物事がうまく運ぶように念じる行いのことである。とはいえ、どれも気休めでしかなく、おまじないをして望み通りの効果が出たことはほとんどなかった。
そんなことで願いが叶うのなら世界中の皆がやっている。だから、エモリエルの世界の人から「戯れる術」とバカにされる理由も理解できる。
永愛もそこは分かっていたのだが、いざという時おまじないの効果が出た経験もあるので、瑞穂やエモリエルの言葉に反論したくなった。
「おまじないは半分気休め。自分を奮い立たせるための手段だった。だから戯術って言われるのも仕方ないけど……。それで願いが叶ったこともあるの…!」
転校したばかりでうまく人と話せない時、友達ができるおまじないをやったら奈津と友達になれた。
「友達ができたの。それに……」
絶対振り向いてもらえないと思っていた秋良宗に告白する前の日、片想いが実るおまじないをしたらいい返事をもらえた。
「今付き合ってる人も、おまじないのおかげで私に振り向いてくれた。だから、戯れの術って言われるのは悲しいな……。ごめんね、生意気なこと言って」
「謝ることない」
瑞穂ははっきりと言った。
「自分の好きなことバカにされたら腹立つし一言言いたくなるのは当たり前だよ。その気持ち分かるし」
「海堂君……」
自分のおまじないにかける情熱を分かってもらえたことが、永愛は嬉しかった。エモリエルもうすく笑い、謝った。
「気分を害してしまい本当に申し訳ありませんでした。それに、組織は戯術と言っていますが、私個人はそんな簡単な言葉で済ませられる話ではないと思っています。特に、あなたのおまじないは」
永愛に配慮し、エモリエルは戯術をおまじないと言い換えた。
「この地球でおまじないを使っているのは永愛さんだけではありません。多くの人々がその力を頼り使用しています。しかし、そのほとんどは効力を発揮しないため、私の組織からは軽視されてきました。でも、ここへ来て、無視出来ない存在となったのです」
エモリエルは真剣な目で永愛を見つめる。
「永愛さん。あなたは言いましたね。おまじないはいつも効果があったわけではないと。あなたに効果が出なかった分、その力は私達の世界に異常気象という形で現れていたのです」
「私のおまじないが、エモリエル君の世界に異常気象を起こしてる…?」
「そうです」
柔らかいエモリエルの口調に鋭さが加わった。
「あなたの戯術は私の世界を崩壊させます。今後、戯術の使用は一切やめていただけないでしょうか?」
(おまじないを使ったらダメ…?)
ショックのあまり、永愛は放心した。
「そんな……。これがないと、私は……」
おまじないを使わない人生なんて考えられない。