ソウルメイト -彼女のおまじないは悪!?-
そう。瑞穂は、中学生ながら占星術の才能を見出され、ペンネームを使い毎月ちょっとした記事を書く仕事をしていた。
「永愛さんもパステルの読者だったとは。記事を書いている瑞穂君としては嬉しいものですよね」
「嬉しかったし……。心配もある」
「なんとなく分かります。彼女はとても危うい。孤独な気持ちをおまじないに頼ることで癒しています」
「あの時渡辺さんが落としたコボルトのメダルキーホルダーも、俺が記事でオススメグッズとして取り上げた物なんだ。今まではあまり意識してなかったけど、自分の書いた文章が誰かの行動を決めてるんだと思うと……。考えさせられた」
パステルで占いに関する記事を書くようになって1年以上経ったが、学校内で読者に会うのは初めてだった。だからよけい、瑞穂は永愛のことが気になった。
「友達はいるみたいだけど、渡辺さんは雰囲気から孤独感が抜けない人だった」
「おまじないを使うことで、様々な葛藤を乗り越えようとしていたのかもしれませんね」
エモリエルも、永愛からおまじないを取り上げるのは本意じゃなかった。しかし、このまま見て見ぬフリをしたら彼女が危険な目にあう。
「組織の上の者は言いました。厳重注意が効かないようなら、力で抑えつけてもかまわないと」
「そんな……!相手は無力な中学生なのに!?」
「組織にとっては環境破壊の原因です。実際永愛さんは言いようのない莫大な力を持っています。一目見て他の学生とは違うと分かりました」
魔術師のエモリエルには、普通の人間とそうでない人間を見分ける勘が備わっている。
「本来の彼女は無力な女性、そのはずでした。おそらくですが、おまじないを使ううちに秘められた力が覚醒したのではないかと思います」
「渡辺さんのおまじないが効いたり効かなかったりしたのも、覚醒した能力が未熟だったから?」
「はい。今後訓練をすれば魔術師になれる可能性が高いです。瑞穂君が目指す占星術師にだってなれるでしょう。ものすごいポテンシャルの持ち主です。私のいた国でも、そのような人物は数えられる程しかいません」
「だったら、その能力を育てて制御できるようにしたらいいんじゃないの?」
瑞穂は提案した。
「エモリエルの星に危険な力が及ばないように渡辺さんを訓練すれば、無理におまじないをやめさせなくても良くなるよ」
「それはいけません。異世界の人間に魔術の訓練をすることは法律で禁止されているのです」
「そんな……。黙ってれば分からないでしょ!?」
「それが、そうもいかないのですよ」
背中に刻まれた組織の一員である証。それは、GPSのようにエモリエルの言動を監視し記録する機能がある。
「この星にいても、私は組織の監視下にあります」
「……そんな」
「永愛さんに訓練を施し罰せられるのが私だけなら、喜んで彼女の訓練をします。でも、そうはいかない。組織は彼女だけを大罪人と見なすでしょう。最悪私だけ罪を免れる結果になってしまいます」
「……でも、渡辺さんには関係ないことだよ」
その通り。それはエモリエル側の事情だ。