ソウルメイト -彼女のおまじないは悪!?-

(占いには「異性とのトラブルが起きる」って書いてあったけど、そんなことなさそう…?)

 緊張していた永愛の気持ちは、少し楽になった。

「私も、一緒に帰りたい」

 永愛の素直な気持ちだった。友達が増えるのは嬉しいし、異性だけど瑞穂やエモリエルにはかまえずにすんだから。

 しかし、そこへ、秋良宗がやってきて瑞穂を牽制した。牽制といっても、そこは優等生。柔らかな物腰だった。

「海堂君。悪いけど、今日永愛ちゃんは僕と一緒に帰る約束をしてるから。ごめんね」

 そんな約束はしていない。だけど、彼氏にそう言われたら従うしかない。永愛は瑞穂に謝った。

「ごめんね、海堂君。やっぱり今日は秋良君と帰るから……」
「そっか。こっちこそごめん。じゃあ、また教室で」
「うん、ごめんね」

 さらりとその場を立ち去る瑞穂の背中を申し訳なさげに見つめ、永愛は宗を見た。

「昨日は一緒に帰れなくてごめんね、秋良君」
「いいよ。また放課後、教室まで迎えに行くよ」

 笑顔のまま、宗は自分のクラスメイトと自分の教室へ行ってしまった。

(なんだろう、この感じ……)

 永愛はモヤモヤしていた。

(秋良君と一緒に帰れること、今までは楽しみにしてたのに、今日はあんまりワクワクしない……。どうして?)

 宗のことが好きなのに、エモリエルや瑞穂の誘いに乗れなかったことの方が残念に思える。

 ぼんやりしたまま永愛が教室に行くと、瑞穂が話しかけてきた。

「さっきは彼氏の前でごめん」
「ううん、気にしないで?大丈夫だから」
「ならいいけど……。連絡先交換しよ?これからエモリエル通して話したいことも出てきそうだし」
「うん、いいよっ!」

 瑞穂の言葉に、永愛の気持ちは弾んだ。永愛の電話帳には、自宅や親、奈津の番号しか登録されていないので、瑞穂と連絡先を交換できるのは大きな前進に思えた。

 気にしないようにしていたものの、クラスメイト同士で連絡先を教え合うのが当たり前となっている中学生活の中で、自分は寂しい人間なのではないかと悩むこともあった。

 連絡先の交換が終わると、瑞穂は満足そうにスマホをポケットにしまった。

「じゃあ、また何かあったら連絡する。渡辺さんも困ったことあったらいつでも言って?」
「え、いいの?」
「もちろん。もう友達でしょ、俺達」
「…わかった!海堂君も連絡してね」
「うん。する」

 喜びで、永愛の頬はうっすら赤くなった。

 友達ができた。相手に友達と思ってもらえた。それがこんなに幸せなんて知らなかった。
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