ソウルメイト -彼女のおまじないは悪!?-
(秋良君の心変わりもショックだけど、それ以上になっちゃんの言葉がつらいよ……)
かけがえのない友達は自分のことを嫌っていた。ここのところ気がかりだった奈津のそっけなさは、自分の気のせいではなかったのだと思い知る。
(なっちゃんとは、おまじないのおかげで話せるようになったと思ってたのに……。おまじない、効かなかったのかな?)
真っ暗な気分で床に座り込む永愛の元に、今度は違うクラスの女子が数人やってきて、彼女の胸ぐらを乱暴につかんだ。
「アンタさ、調子乗るのもいい加減にしなよ。好きでもないのに秋良君と付き合ってたんだって?そんなんじゃ秋良君が別れたくなるの当然でしょ?」
「……!」
「根暗のクセに!」
反論しようとしても、囲むように立ち塞がる女子達の威圧感に恐怖し、永愛は声を出せなくなった。
(エモリエル君達と仲良くなれて人と話すのにも慣れたつもりでいたけど、ダメだ……。誤解だって伝えたいのに、こわい!)
周囲には、何事かと野次馬が集まる。「面白いことやってるぞ」とさわぐ声が、永愛の耳に悲しく響いた。胸ぐらをつかまれ、ますます気力が失われていく。
「何してるの?離しなよ」
「ちょ、海堂!?」
永愛の胸ぐらをつかんでいた女子の手は、瑞穂が振り払った。
「寝坊した。昨日エモリエルんちで夜更かししてたから。助けるの遅くなってごめん」
瑞穂は永愛をゆっくり立ち上がらせた。
「邪魔しないでよ海堂!私達はこの子に話があるんだから!」
「話する雰囲気には見えなかったけど」
瑞穂は女子達を冷たく見据えた。
「渡辺さん怯えてる……。自分達のやってること、恥ずかしくない?」
「…っ!行こ!」
瑞穂には太刀打ちできない。そう判断した女子達は一目散に逃げていった。
女子達がいなくなってすぐ、エモリエルもその場にやってきた。彼も、瑞穂と同じく寝坊したらしい。
「何があったのですか…?」
「ちょっとね。渡辺さん、大丈夫?」
うなずくのが精一杯で、永愛は言葉で答えることができなかった。友達と彼氏、二人に同時に裏切られたショックが、彼女を追いつめる。
(もう、何を信じたらいいか分からない……。ウワサを信じて攻撃してくる人もこわい)
エモリエルと瑞穂は心配そうに永愛を見つめていたが、その日永愛は学校で一度も口を開かなかった。
昼休みになればじっくり話せるかと思ったが、チャイムが鳴ってすぐ、永愛は教室から逃げるように一人でどこかへ行ってしまったので、瑞穂とエモリエルはますます彼女のことが心配になった。
永愛があんな目にあったというのに、奈津は全く心配するそぶりを見せない。不思議に思った瑞穂は、給食を食べてすぐ、奈津の席に行った。
奈津は、他の女子グループと楽しく雑談している。エモリエルは自分の席から瑞穂と奈津の様子を見ていた。
「瀬川さんは渡辺さんのこと心配じゃないの?」
瑞穂から唐突に訊かれ、奈津はあからさまにうんざりした顔をした。
「は?」
「渡辺さん、今朝女子とモメてたでしょ」
「……」