ソウルメイト -彼女のおまじないは悪!?-
奈津は席を立ち、瑞穂の腕を引っぱって廊下に出た。一緒にいる女子達や他のクラスメイトに話を聞かれたくないらしい。瑞穂はおとなしくついていった。
「一緒にいたら友達?そんなの、周りの勝手な思い込みだよ」
「渡辺さんのこと嫌いなんだ?」
「いちいち確認しなくても見てれば分かるでしょ?てか、海堂には関係なくない?それに、皆の前で永愛の話するのやめてよ。変に思われるから」
「……前から思ってた。瀬川さんと渡辺さんってチグハグだなって。友達同士っぽくないというか、どっちかというと主従関係に見えてた」
瑞穂の指摘に、奈津はカッとなり顔を赤くした。
「だから何?私が悪いの?」
「友達と思えない相手と、どうして何年も一緒にいられたのかなと思って」
「海堂には分からないだろうけど、女子には色々あるんだよ。気の合う子とばかり友達になれるとは限らない。嫌な人とも仲良くしなきゃやってけないんだよ……」
「……なるほど。渡辺さんと一緒にいることで、女子同士の難しさから逃れてたってこと」
「もういい?あんまりアンタと関わってると他の子に色々探り入れられてめんどくさくなる」
立ち去ろうとする奈津に、瑞穂は諭すように言った。
「誰と関わろうがその人の自由だと思うけど……。渡辺さんは心底瀬川さんのこと慕ってた。瀬川さんだって、渡辺さんのおかげで助かったこと色々あったと思う。仲直りしろとは言わないけど、そういうのは忘れないであげて」
「……」
そのまま教室へは戻らず、瑞穂は廊下からいなくなった。
瑞穂が立ち去った後、教室に戻る気になれなかった奈津は、意味なく女子トイレに入った。鏡の中の自分を見つめ、両手を強く握りしめる。
「……友達だなんて、思ったことない」
そのはずなのに、瑞穂に言われた言葉が何度も頭の中に去来した。
奈津と話し終え瑞穂が向かったのは屋上だった。
夏真っただ中、昼間の屋上は暑いので、昼休みにもほとんど誰も来ないが、わずかに日陰となった場所に永愛の姿を見つけた。
「ここにいたんだ」
「……海堂君」
「隣、いい?」
「……」
永愛は返事をしなかったが、瑞穂は彼女の隣に座った。それきり言葉を交わさない時間がしばらく流れた。
五分ほどして、永愛がぽつりとつぶやいた。
「末永く愛される子に育ちますように。そんな願いを込めて付けられた名前なのに、私、全然そんな子になってない……」
永愛は涙声で思いを吐き出した。
「おまじないがエモリエル君の星を傷つけてるなんて思わなかった。秋良君の気持ちを信じてた。なっちゃんは私なんかと仲良くしてくれる大切な子だった。でも、皆いなくなった……。他のクラスの子にまで悪い誤解が広まってる。これからどうしたらいいか分からない……」