ソウルメイト -彼女のおまじないは悪!?-

「大丈夫ですよ。瑞穂君には言いません。あなたの気持ちも、その気持ちが高じておまじないを使ったことも」

 永愛が約束を破っておまじないを使ったことを、エモリエルはやはり知っていた。

「……ごめんなさい。友達なのに、約束を破ってしまって……」
「口約束で使用をやめるほど簡単な想いなら、あなたはおまじないなど必要とせず生きてきたと思います」

 エモリエルの言葉も表情も優しかった。てっきり責められると思っていた永愛は肩透かしをくらい、謝罪の言葉も飲み込んでしまう。

「そこまであなたを突き動かす瑞穂君が、私は心底うらやましいのです」
「……エモリエル君…?」

 永愛にはエモリエルの心情が分からなかった。それに、責められなかったら責められなかったで戸惑ってしまう。

(話って、おまじないのことじゃなかったの…?どうしてエモリエル君は怒らないの?)

 それきりその話は流れ、二人は花火大会の会場に着いた。混み合う中、永愛はエモリエルとはぐれそうになってしまう。

「……っ!永愛さん!」

 人混みに押し流されそうになる永愛の手を、エモリエルは寸前のところで引いた。

 おかげで離れずにすんだが、それきりエモリエルは手をつないだままにしていたので、永愛は緊張した。

「あの、エモリエル君、手……」
「混雑しています。嫌でなければ、しばらくこのままでいてください」
「そ、そうだね、分かった」

(気心知れた友達のはずなのに、こうしていると全く知らない男の子みたい……)

 はじめは意識したものの、普段から紳士的で大人っぽいエモリエルのエスコートは、じょじょに永愛の心を落ち着かせていった。

 花火が始まり、真っ暗だった夜空は華やかさに溢れた。ひとつひとつ花火が打ち上げられるたび、来客の反応する声が会場をにぎやかにする。

「キレイ……」

 永愛は、誰に言うでもなくつぶやく。その横顔を、エモリエルは切なげな瞳で見ていた。

「花火より、あなたの方がキレイですよ」

 花火の打ち上げ音と周囲のざわめきが、エモリエルの本音をかき消した。永愛の耳にも届くことなくーー。

 花火が途切れた時、永愛がふと視線を下ろすと、よく知る顔を見つけた。心臓が嫌な音を立てる。

「瑞穂君……」

 この花火大会へは来られない。そう言い参加を断った瑞穂が、永愛の視線の先にいた。琴坂いなみと一緒に。

「……」

 いなみと語りながら花火を見る瑞穂は、安堵(あんど)の表情を見せ、楽しそうだった。

 あの二人の関係はもう分かっていたはずなのに、こうして見つけてしまうとショックだった。花火を見ることなどどうでも良くなり、永愛はその場で静かに涙を流した。

(花火大会だもん。瑞穂君だって、私達と行くより彼女を優先するのは当たり前だよ……)
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