ソウルメイト -彼女のおまじないは悪!?-
エモリエルのそばで両者の話を聞いていた瑞穂はジョセフの言動を訝(いぶか)しみ、言った。
「そっちの事情は知らないし知りたいとも思わない。永愛は返してもらうから」
「ほう。君がエモリエルのソウルメイトか」
何もかも見透かしたように、ジョセフは苦笑した。
「分かっていたよ。エモリエルが私に内緒でソウルメイトの探索を行っていたことも、今回の任務に乗り気ではなかったことも……。なるほどな。ソウルメイトというだけあって、お前達はよく似ている」
「ジョセフ司令官……」
近付いてくるジョセフに、エモリエルと瑞穂は半歩退いて距離を取った。それに気付いたジョセフは、悲しげに眉を下げ立ち止まる。
「エモリエル。お前はよくやってくれたよ。だが、両親に似て考えが甘い。戯術の使用を見逃し、そのまま野放しにするとはな」
「戯術は危険、それは重々承知しています。でも、彼女は私にとって大切な友達なのです。いえ、たとえ友達ではなかったとしても、私は彼女の命を奪うことなどできなかったでしょう」
それは、エモリエルの正直な気持ちだった。いくら任務とはいえ、自分の手で人を殺すなんて出来なかった。
ジョセフはエモリエルの気持ちを受け止めた。
「何年お前のそばに居たと思っている。分かっていたさ。しかし、今となってはもういいんだ」
「彼女をどうするおつもりです…?」
「殺せないなら、生かしてこちら側に取り込む。建設的なアイデアだろう?誰も傷つかない」
「まさか…!」
エモリエルは青ざめた。ジョセフの近くに控えていた永愛は、よく知る彼女とは別人のように無表情だった。彼女のオーラが以前とガラリと変わってしまった理由も、今ならうなずける。
「ジョセフ司令官。こんなこと考えたくはありませんが、あなたは永愛さんの記憶を…!」
「そうだ。我々の支配下に置くため、邪魔になる記憶は封印した。これも世界のためだ」
「あなたにそこまでする権利はないはずです!」
「ある!私は宇宙を統括する組織の最高司令官なのだからな!」
エモリエルもジョセフも、興奮状態だった。
それまで一人おとなしく話を聞いていた瑞穂が、その時初めて、ジョセフに向かって口を開いた。
「お互いに譲る気はないってことですね。なら、こっちは永愛を連れ帰るだけです」
瑞穂が永愛の手を引こうとすると、彼女はそれを強く拒んだ。手を振り払う音が、実際より大きく瑞穂の耳に響いた。
「永愛……。本当に記憶が?」
瑞穂は激しく動揺した。永愛は冷たく言い放つ。
「ジョセフ司令官の敵は私の敵。あなたを排除します」
「瑞穂君、危ない…!」
永愛が手のひらから放ったビーム砲は、瞬きする暇も与えず瑞穂の毛先をかすめた。寸前のところでエモリエルが瑞穂を抱き抱え避けたおかげで、直撃せずにすんだのだ。