ソウルメイト -彼女のおまじないは悪!?-
「こうやって話している間にも、永愛はジョセフ司令官の好きなように操られてる!対策立て直すなんて悠長なこと言ってる場合?」
瑞穂の焦りはもっともだった。敵の陣地にいる永愛のことが心配だ。今は無事でも、明日には殺されているかもしれない。元々永愛の処分を考えていたジョセフだ、十分あり得る。
エモリエルは、静かに謝罪の言葉を口にした。
「すみません、瑞穂君。対策はもう頭の中にあったのです。私の覚悟が足りないばかりに、少し時間を要しました。もう大丈夫です。永愛さんの元に行きましょう!」
「エモリエル……?」
いつになく積極的なエモリエルに違和感を覚えたが、瑞穂はそれを口にしなかった。エモリエルの言う対策が何なのかは分からないが、今は永愛を無事に救いたい、その気持ちでいっぱいだったから。
再びジョセフ司令官の元を訪れたエモリエルと瑞穂は、こわばった表情でジョセフに詰め寄った。
「永愛さんを返してください」
「エモリエル。いくらお前の願いでも、聞き入れるわけにはいかない」
「これでもですか?」
ジョセフの手を取り、エモリエルは微笑した。一見、握手をしているように見えるが、この時エモリエルは魔力を使って、ジョセフに情報を送っていたのである。
「これは…!!」
「永愛さんを、元の姿で返していただけますね?」
「分かった。しかし、それではお前が……」
「いいのです。魂は帰るべき場所に帰っていくのですから」
「……分かった。この娘を解放する」
ジョセフがうなずいた瞬間、近くに立っていた永愛は気を失って倒れた。瑞穂は駆け寄り、力なく倒れた永愛を抱き起こした。
「永愛……」
あんなにかたくなだったジョセフがアッサリ永愛を返してくれたことに裏を感じた瑞穂は、最初素直に喜べなかったが、
「行きましょう、瑞穂君。永愛さんも一緒に、地球へ」
エモリエルに促されたことで、少しずつ、うまく運ぶこの現実を受け入れられるようになったのだった。
エモリエルは、自分の命と引き換えに永愛の魔力を奪い、彼女を無害な存在にしてから地球に帰した。これでもう、彼女は平穏な生活を送れる。
瑞穂と永愛を地球に帰した後、エモリエルは単独でジョセフの元を訪れた。
「宇宙のためとはいえ、お前には多大な犠牲を強いてしまった……。本当にあれでよかったのか?お前が死ねば、あの少年少女からお前に関する記憶は消えてしまうというのに……」
「いいのですよ。元々、私はあの世界の人間ではないので、忘れてもらった方が気が楽です」