「野球が俺の恋人」なんて言わせない！！
　　悠樹がすっと立った。

　　「悠樹・・・・・？」

　　あたしはまだ、今の話を
　　信じていなかった。

　　いや、信じられずにいた。

　　悠樹はそのまま未来と五十嵐さんが
　　いる技術室の戸を開けた。


　　ガラガラガラッ。


　　「・・・・・・悠樹。」


　　「どういうことだ？」


　　悠樹は怒っていた。本気で。
　　悠樹が本気で怒ったのを見た
　　ことがなかったから、怖かった。
　　

　　「聞いてたんだね。
　　聞いたままだよ。あたしが噂
　　流したたんだよ。」


　　「何で、そんなことを・・・！」


　　「悠樹が気付こうとしないから。
　　自分を好きな人達の気持ちに。」


　　「俺を傷つけるためなのか？！」


　　「違うよ。女子に諦めるきっかけ
　　が出来るように。ゲイだって言えば
　　大抵の女子は引いていくから。」


　　「じゃあ、お前もゲイは
　　気持ち悪いと思ってたのかよ？」


　　桜井が未来に言う。


　　「当たり前でしょ？ゲイを
　　気持ち悪いと思わない人なんて
　　滅多にいないんだよ。」

　　
　　未来の返事に顔を歪めて、
　　桜井は壁を思いっきり殴って、
　　出て行った。


　　「漣！！！」


　　悠樹が呼び止めるけど、
　　桜井は振り返らなかった。


　　今ので、悠樹は桜井がゲイだと
　　気付いただろう。その相手が
　　自分だとは知らなくても。
　　


　　
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