「野球が俺の恋人」なんて言わせない!!
  「今の未来には味方できない。
  考え直してほしい。」


  あたしも振り返らない。
  振り返ったら未練が残る。


  未来に味方したくなる。
  

  悠樹をこんなにも傷つけた未来に
  味方するわけにはいかないから。
  そして桜井も。きっとボロボロに
  傷ついているから。


  技術室から出て、あたし達は
  グラウンドの階段の観覧席に行った。


  桜井がグラウンドにいると思ったから。

  桜井は、予想通りいて、、
  苛立ちをぶつけるようにボールを
  投げていた。


  桜井があたし達に気付いて、
  観覧席に座った。


  「どうして・・・・・!」


  悠樹が搾り出すように言った。
  そのとき、分かった。


  悠樹は怒っていただけじゃないんだ。
  怒っているのと同じくらい、
  悲しんでいたんだって。


  柊は悠樹をそっと抱きしめた。
  苦しそうな辛そうな顔で。


  涙が出た。


  「ねぇ、どうして・・どうして
  気付かなか・・・ったんだろうね?
  未来・・がっあんなになるまで。
  何で・・分かってあげられ・・なかった
  のかな。ずっと・・側にいた・・のに。」


  悲しかった。未来はもう
  変わってしまったんだと思った。
  もう戻っては来ないんだと。

  
  「俺達の知ってる未来は
  もういねぇんだよ・・・・!」


  向き合おうと思えば向き合える
  はずだった。「一緒に頑張ろう」
  そう言えば何かが変わっていたかも
  しれなかった。


  だけどもう、あたし達にはそんな
  気力が残っていなかった。
  
  
  
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