「野球が俺の恋人」なんて言わせない！！

　　【その頃の拓人】


　　「ねぇ、拓人。聞いてるの？」


　　「ん？あぁ、聞いてるって。。」


　　うるせぇな、さっきから。同じような
　　話ばっかり繰り返して楽しいか？


　　適当に聞き流すことにした。


　　この手の女は自尊心を傷つけると
　　後が面倒でうるさいことは経験上
　　よく知っている。


　　「あたしのクラスに瀬戸未来って
　　子がいるんだけど――――。」

　　
　　アイツの名前が出てきたことに
　　一瞬驚いたが、よく考えれば
　　この女と未来は同学年だから
　　名前が出てきても驚くことじゃ
　　ないな。。あまりにも未来が
　　色気ねぇからこの女と同じ学年
　　だって思えないんだよなぁ。。


　　普通中二の女ってのはこの女みたいに
　　男に愛想ふりまいてるもんじゃねぇの？


　　校則ぎりぎりまで短くしたスカートに
　　染めた髪の毛に派手なカーディガン。


　　『あたしと付き合ってくれない？？
　　どうせ他の仔達とも遊びで付き合ったん
　　でしょ？？あたしも遊びでいいから。』


　　この女が言った台詞。他の女たちも
　　大体同じような台詞を吐く。

　　
　　それなのにアイツときたら。

　　
　　（本人は全く気付いてないが、）
　　それなりにモテるのに全く眼中になく、
　　常に市川悠樹一筋。


　　男子と女子に話しかけるのと同じように
　　普通に話す。他の女からしたらクソ面白く
　　ないに違いねぇ。自分たちは必死に男探
　　しなのに未来はのほほんとただ喋ってる
　　だけ。未来にとって『男』は悠樹だけなん
　　だろが。他の男が憐れだな。俺も含め。