「野球が俺の恋人」なんて言わせない!!
  こんなに泣いてるくせに・・・・!


  なんとなく。未来が本当はずっと
  こうやって泣いてきたのかもと
  思った。誰にも知られないように
  たった一人で。今まで誰にも知られる
  ことなく一人で泣いていたのかも
  しれないと思った。


  誰も知らないんだろ?


  いつも一緒にいる新庄も市川悠樹も
  人の心が分かるといわれている市川柊
  でさえも。おそらくコイツのこんな姿
  を知らない。ずっと一緒にいても。

  
  いや、ずっと一緒にいるからこそ。


  知られないように必死に押し隠して、
  市川柊にさえ気付かせないほど。


  「お前がいい仔ちゃんなのは、
  あいつ等の前でだけなんだろ??」


  分かったことがある。

 
  なぜコイツがいい仔に見えたのか。

 
  喋ってみればなんてことのない
  ちょっと人より純粋めなだけの
  普通の女で別にいい仔って感じ
  じゃなかった。


  でも、喋る前、市川達と一緒に
  いるのを遠くから見ていただけの
  時どうしようもなく甘くてムカつく
  いい仔ちゃんにしか見えなかった。


  何も悩みありませんって顔で
  笑ってるのを見て、「めでたい奴」
  そう思った。叩き潰してやりたい
  ぐらいムカつく笑顔だった。


  それが俺と話してるときは生意気
  だし、あんま笑わねぇし。

 
  いい仔でいたのも笑顔でいれた
  のもあいつ等の前だからこそ。


  あいつ等は最高に未来を幸せに
  する代わりに他の誰よりも未来を
  傷付ける。


  その中に俺は入らない。入れない。


  そういうことだろ?

 
  


  


  


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