「野球が俺の恋人」なんて言わせない!!
  「俺のものになれよ。そしたら
  泣かなくて済むだろ。馬鹿女。」


  コイツの答えなんか聞かなくても
  分かっている。


  「嫌。あたしは・・・悠樹が
  好きだもん。拓人浮気ばっか
  して疲れそうだし・・・っ。」


  「しない。お前が俺のものになる
  なら他の女はいらない。それでも
  俺のものにはなれないわけ?」


  この答えも。分かりきっている。


  「なんない。悠樹だけだから。」


  「ちょっとは悩めよ。馬鹿。」


  「馬鹿馬鹿言わないでよ・・・っ!
  どうせ馬鹿だよ・・・・・・っ。」


  「悪い。馬鹿じゃない。全然。」


  真っ直ぐ過ぎるところが嫌い
  だった。素直すぎる所が嫌い
  だった。


  見るたびに笑ってるのが嫌い
  だった。


  踏み潰してやりたいぐらい、、
  嫌いだった。徹底的に叩き落して
  二度といい仔ちゃん面できない
  ぐらいに傷つけてやりたかった。


  悩みなんかなさそうでお気楽そうで
  馬鹿な奴だと思っていた。


  知っている。


  もう全部過去形なんだってこと。


  その馬鹿さも素直さも笑顔も
  どうしようもなく好きだ。


  一度でいいからその笑顔を
  俺だけに向けてほしいと
  思った。他の誰でもなく。


  好き?愛してる?


  いや違う。俺はお前に執着
  してるんだ。多分。


  『未来』というたった一人の
  なんでもない女にどうしようも
  なく執着している。
  

  


  
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