王女・ヴェロニカ
「これはきっと父の仕業ですわ」
「ビアンカ! 滅多なことを言ってはダメよ」
「だって! 使われたものはリッサンカルアの……父の故郷の毒物です」
「落ち着いて、ビアンカ。リッサンカルアの国外で流通している毒物なのでしょう? この国の人物でも簡単に手に入れられる。そうでしょ?」
 こくん、とビアンカが頷く。
「それに、わざわざ自分に繋がるような毒物を使うかしら? もしわたしが敵を毒殺するなら……リーカ王国原産の毒物は避けるわ」
「でも、そう思わせるために、わざと使ったのかもしれません。父は、わたくしがこの毒の解毒法を知っているとは思いもよらないでしょうから……」
 きゅっ、とビアンカは唇を噛みしめた。その顔に、穏やかな朝日があたる。
「お父様だったら……わたくし、絶対に許さないわ」
「ビアンカ……どうしてそんなに……?」
「セレスティナさまは……ありのままのわたくしを可愛がってくださる。側室であるわたくしを憎むことも恨むこともなく、実の親以上に愛して下さる」
 本当はお母様と呼びたいくらい、とビアンカは一筋、涙を流した。
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