王女・ヴェロニカ
変化、たくらみ、露見
:1:

  本営に到着したヴェロニカとマイクのもとに、ビアンカが転がるようにして飛んできた。
「ヴェロニカさま!」
「ビアンカ、元気そうでよかった。敵国で酷い目にあわされなかった?」
 こくこく、と頷くビアンカは人目も憚らず泣いている。
「あー、ヴェロニカが美少女泣かしたー。いけないんだー!」
「うぅ、マイク、罪悪感が増すようなこと言わないでー……」
 そこへ興奮した面持ちのフィオが駆け込んできた。
「ねえさま、ご無事でよかった!」
「フィオ!」
「あの、いっぱいいっぱい、お話したいことはあるのです。でもまず、会ってください!」
 ヴェロニカの返事を待つことなく、どうぞ、とフィオがテントの外に向かって叫んだ。一瞬の沈黙の後、入ってきたのは一組の男女。
 いずれも、派手な赤い布を身に纏っている。
「あ、兄上! マイケル兄上ではございませんか?」
 金髪の青年が、マイクに走り寄った。
「……ハリー……? ヘンリー・エルフ・ブレータニアン……か……?」
 金髪の青年が大きく頷く。
「お久しぶりでございます。兄上……」
「……生きて会えるとは思ってなかった……」
 マイクも驚くことがあるんだねぇ、とヴェロニカが妙なところで感心し、フィオもこくこく、と頷いた。
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