王女・ヴェロニカ
「ええ、ほんとに……。絶対ばれないと思ったのに、わたくしたち、修行が足らないみたいね?」
「さぁ二人とも、一緒にお茶にしましょう。今日は料理長が特別に焼いてくれた、はちみつ入りのクッキーとバラのお茶よ」
侍女が、傍らに置いてあったバスケットを差し出す。ふんわりと、はちみつの甘い香りが漂う。
ヴェロニカのお腹が、きゅるるる、と小さく鳴った。
「あわわわ。失礼しました」
顔を赤くしてお腹をおさえるが、その視線はしっかりとクッキーに注がれている。
「ヴェロニカ……あなた朝もたっぷり食べたでしょう? そんなに食べるとコルセットやクリノリンがつけられなくなりますよ」
「ドレスを仕立て直して、隠すから気にしません」
「そういう問題ではないでしょう? それに、ドレスを仕立て直すって言っても、手間暇かかるのよ?」
ヴェロニカたち三人が着ているドレスは、色が違うだけでいずれも同じタイプのものである。
まず、長いスカートの下には、レースのペチコートを履いている。そして裾を広げるために「クリノリン」と呼ばれる鳥籠のようなものが装着してある。
このクリノリンの中に、ヴェロニカは武器と布袋を隠している。他の人が何か隠しているという話は聞かないが、市井では万引きした品をここに隠すこともあると聞く。
ちなみに今の流行は後ろを膨らませるスタイルだが、数年前は左右に出っ張った形が人気だったため、幼いヴェロニカは左右にやたら膨らんだドレスを着ていた。
それから、ウエストを細く見せるためにコルセットを付けている。これが苦しいのだが、これがないとドレスが着られない。
さらに、細い腕を演出するために袖は肩口から大きく膨らんでいるし、こんもりと膨らませたスカートの後ろには大きなリボンやレースが惜しげもなくついている。
これらすべて身につけると、重たいし動きにくい。ヴェロニカは、侍女たちが着ている簡素なワンピースが羨ましくて仕方がない。
「多少クリノリンを改造しているとはいえ……これだけ締め付けて動きを制限されていながら、棍を振り回して大立ち回りをやるヴェロニカ、あなたは大したものだと思いますよ」
妙なところで母に褒められ、ヴェロニカがうれしそうに笑った。
「さぁ二人とも、一緒にお茶にしましょう。今日は料理長が特別に焼いてくれた、はちみつ入りのクッキーとバラのお茶よ」
侍女が、傍らに置いてあったバスケットを差し出す。ふんわりと、はちみつの甘い香りが漂う。
ヴェロニカのお腹が、きゅるるる、と小さく鳴った。
「あわわわ。失礼しました」
顔を赤くしてお腹をおさえるが、その視線はしっかりとクッキーに注がれている。
「ヴェロニカ……あなた朝もたっぷり食べたでしょう? そんなに食べるとコルセットやクリノリンがつけられなくなりますよ」
「ドレスを仕立て直して、隠すから気にしません」
「そういう問題ではないでしょう? それに、ドレスを仕立て直すって言っても、手間暇かかるのよ?」
ヴェロニカたち三人が着ているドレスは、色が違うだけでいずれも同じタイプのものである。
まず、長いスカートの下には、レースのペチコートを履いている。そして裾を広げるために「クリノリン」と呼ばれる鳥籠のようなものが装着してある。
このクリノリンの中に、ヴェロニカは武器と布袋を隠している。他の人が何か隠しているという話は聞かないが、市井では万引きした品をここに隠すこともあると聞く。
ちなみに今の流行は後ろを膨らませるスタイルだが、数年前は左右に出っ張った形が人気だったため、幼いヴェロニカは左右にやたら膨らんだドレスを着ていた。
それから、ウエストを細く見せるためにコルセットを付けている。これが苦しいのだが、これがないとドレスが着られない。
さらに、細い腕を演出するために袖は肩口から大きく膨らんでいるし、こんもりと膨らませたスカートの後ろには大きなリボンやレースが惜しげもなくついている。
これらすべて身につけると、重たいし動きにくい。ヴェロニカは、侍女たちが着ている簡素なワンピースが羨ましくて仕方がない。
「多少クリノリンを改造しているとはいえ……これだけ締め付けて動きを制限されていながら、棍を振り回して大立ち回りをやるヴェロニカ、あなたは大したものだと思いますよ」
妙なところで母に褒められ、ヴェロニカがうれしそうに笑った。