王女・ヴェロニカ
 だが、自分の祖国、果ては近隣諸国まで手に入れようとする一家臣など、グーレースは聞いたことがない。ノア王子も首をかしげていた。
「かつて奪われた土地を、本来の持ち主であるエンリケ家に取り戻すための革命である!」
 とエンリケは言っているらしい。
 ヴェールが、ヴェロニカとノア王子を前にして嘘を言ったとも思えないが、そんな『革命』など、認めるわけにはいかない。
 たとえ本当に、エンリケ家がこのあたり一帯の、かつての領主だったとしても、現在そこで暮らしている人々を薬漬けにし、想いのままに操って、苦しめて良い理由にはならない。
 そんな領主では民は喜ばない、とノア王子も吐き捨てた。
「エンリケ、お前がやっていることは『革命』などではないぞ……!」
< 137 / 159 >

この作品をシェア

pagetop