王女・ヴェロニカ
 
◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 夜明け前——。
 ヴェロニカは、単身、本営を後にした。
 ドレスは黒、髪も黒い布で覆っている。そして小脇に抱えたものは、武器ではない。
 まだビアンカが消えたことに気付いていないのだろう、静まり返った「ジャジータ宮殿」の前で、マイクとヴェロニカは落ち合った。
「マイク、お待たせ」
「こっちだ、ヴェロニカ。この宮殿には隠し水路があるらしい……」
「ふふ、手ぬるい警備ね……」
「今回ばかりは、それが助かるな」
(エンリケを討つのはわたし、絶対に許さないんだから……!)

——朝日に照らされる宮殿の屋根から、リーカ王家の旗が翻っているのを町の人々は見た。
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