王女・ヴェロニカ
 幸い、親しくなった兵が格闘術に長けていて、こっそり教えてもらってあっという間に強くなった。
(この国へ来て、グーレース師匠が手直しして鍛えてくれたんだよなぁ……)
 自分の国が滅ぼされたのは、いつだったか。
 囚われの身だった己を、コロン一三世が助けてくれたのはつい最近のことのような気もするし、随分過去のことのような気もする。
 そして——かつて自分の両親の首をはねた『あの男』と同じ王宮内で過ごすことに耐えられなくなり、勝手に王宮を飛び出し、放浪し始めて何年になるだろう。
(俺みてぇな非力なガキが、よく王宮の外でここまで生き延びることができたよな……)
 オオスナグマなる未知の生物のところへ向かいながら、マイクは今まで振り返ることもなかった自分の過去を、少しずつ思い出していた。
 かつては、過去を思い出すことが苦痛だった。
(いつの間にか、平気になったな……)
 きっと、あのサーモンピンクのおかげだろう。口に出しては、言わないが。
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