王女・ヴェロニカ
「こんなときは、どうしたらいいんだっけ……?」 
 マイクとて数々の修羅場をくぐってきた「戦士」だ。数秒と経たずにすぐに表情を引き締めた。
「あっ、こら、ヴェロニカ、まだ動くなよ! 頭が……」
「失礼ね、わたしの頭は正常よ!」
「そういう意味じゃねぇ! 頭、強く打っただろ」
「大丈夫よ。視界も良好。マイク、いい? わたしがクマの気を逸らすから、その隙に腹部でも股間でもどこでもいいから拳を叩きこむのよっ! 少しばかり大きなクマに怯んで、エンリケが倒せるはずはないわ!」
 あぶねぇ、未知の敵にひとりで突っ込むな、と正しいことを喚くマイクを残して、怒りのオーラを纏って鬼と化したヴェロニカは勇猛果敢にクマに突撃していった。
「師匠を、はなしなさい! 大人しく、巣穴に戻りなさい! ヴェロニカさまの言うことが聞けないの?」
「がおおおお!」
「そう、仕方ないわね。成敗!」

 案の定、というべきか。
(ヴェロニカ、お前もう、化けモンの領域だろ……)
 激闘を制したのはヴェロニカだった。マイクが手を出す隙も何もなかった。
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