王女・ヴェロニカ
 リーカ王国の王女・ヴェロニカだと信じられているビアンカは、第三王子の所有物と認識されているらしい。
 荒縄は解いてもらえたものの、手足に鈴を付けられ、動くたびにリンリンと音がする。
 ひどく鬱陶しいが、浴場もあれば三食きちんと届くし、世話係の侍女も小姓もつけられている。衣食住に不自由はないし危害を加えられる心配もない。
 人質としてはかなり良い待遇だと思う。
 だが、ビアンカがここから逃げようとしたり宮から勝手に出ようとしたりすると衛兵や侍女がすっとんで来て部屋に押し込められてしまう。
 それを無理に突破すれば、人質を逃がした責任として、衛兵や侍女が殺されてしまう。
(恐ろしい王子だわ……大嫌い!)
 眩暈がするほどに高い天井に大理石の床、大きな窓には分厚いガラスがはめ込まれている。
 ヴェロニカならともかく、ビアンカの細腕では簡単に抜け出せそうにはない。
(どうやって逃げたらいいのかしら……こんなことになるのなら、ヴェロニカさまに武術を習っておけばよかったわ……)

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