燃え滓と夜にみる夢【短編】
燃え滓と夜にみる夢
珍しく気が向いて参加した同窓会で、初恋の彼に会った。
「今度二人目の子供が産まれるんだ」
あの頃と変わらない屈託のない笑顔で嬉しそうに語る彼の横顔に当時の思い出が蘇る。
今の私には、わざわざ話すような近況もない。
当たり障りのない、お祝いの言葉を返すだけ。
やっぱり、来るんじゃなかった。
未だに彼を好きな訳じゃないが、何だか眩し過ぎる。思わず、目を伏せた私に覗き込むように彼が言った。
「今、幸せかい?」
まぁ、それなりに。としか答えようがない。
「今更、こんなこと言うのは反則かもしれないけど、あの頃、俺は君を好きだった」
今更、口説いてるの?少し苦笑いで受け流した。
「本気だったよ……」
声のトーンが変わって、うつ向いた彼を何故かあどけなく感じたから、本当のことを答えた。
私も……と。
「知ってたよ」
彼がまた、あの笑顔で笑った。