強引上司の溺愛トラップ
課長と抱き合ったような状態のまま、私はパニックに陥る。

ど、どうすればいいの!?
早くどかなきゃいけないんだろうけど、課長にどんな顔をすればいいのか、何て言えばいいのか分からなくて、私は課長の胸に顔を埋めたまま、動くことが出来ない。


「……とりあえず、身体離すぞ」

動揺する私に課長はそう言って、ゆっくりと私の身体を離した。

思わず、至近距離で見つめ合ってしまった。


「あっ、あの、すみません! 私の不注意のせいで! あの……!」

「いや、俺はいーけどよ。お前は、その……初めてだっただろ? いや、気にすんな、っつーのも変な話だが……その、事故はノーカンだ、ノーカン。俺も不注意だった。悪い、嫌な思いさせたな」

課長は、最初こそ笑いながらそう言ってくれていたけど、段々と……申し訳なさそうな顔で私にそう言った。


その言葉を聞いて、私は……何でだろう。


「あの……」


課長の言うこと、間違ってないはずなのに、間違ってると、思ってしまった。


どこが違うんだろう。ああ、そうか。
その答えは、すぐに分かった。



「……嫌じゃ、ないです……」

「え?」


「ドキドキするけど……嫌じゃ、ないです」
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