強引上司の溺愛トラップ
「渡辺さん、おはようございます。あ、昨日のドラマ観ました?」

朝から可愛い笑顔で、いつも通り人懐っこく、一島くんが私にそう話し掛けてくる。


「う、うん。観たよ。面白かったね」

毎週火曜日の夜十時から放映されている恋愛ドラマ。ドラマは特別よく観るって訳じゃないんだけど、お風呂から上がると神くんがリビングのソファーで観ていることが多く、私もそのとなりでアイスを食べながら一緒に観たりすることがたまにある。
その中で、昨日放送のそのドラマは初回から面白くて、一週間の楽しみになっていた。
そしてこの間、雑談の中で一島くんに話したら、『俺も好きです』って言われて、水曜日の朝はドラマの話をすることがある。

一島くんに対する未練はもう全くないけど、やっぱり彼とは趣味とか好きなものとかが合うんだなぁとは思う。課長にこの間ドラマの話したら、『俺はニュースしか観ない』って言われたし。



「お前ら、喋ってないでさっさと掃除して仕事始めろよ」

後ろから課長に声を掛けられ、私は思わず背筋をピッとさせ、「は、はいっ!」と無駄に大きな声を出してしまった。


「渡辺さん、課長のこと、そんなに怖いですか?」

一島くんが私に、コソッとそう聞いてくる。


「え、えっ?」

「確かに怖いところもありますけど、今はそんなに怒ってなかったじゃないですか」

「う、うん、そうだね……」


違うんだ一島くん。私は課長が怖くて緊張してた訳じゃないんだ。

私は……





最近、課長を見るだけでドキドキして仕方ないんです!!
< 112 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop