強引上司の溺愛トラップ
その後、営業室内にある簡易応接で、その女性――千鈴さんと課長は、テーブルに向き合って座って、何やら話を始めた。
私は、課長にコーヒーをふたり分頼まれたので、仕事を一島くんに任せて、ソワソワしながらコーヒーを持っていった。
「どうもありがとう」
千鈴さんはにっこりと笑いながら私にそう言う。
うう……笑うとますます美人だなぁ。この人、課長とどういう関係なの? もしかして、課長がこの間言ってた……
……いや、憶測で色々考えるのはやめよう。きっと課長は、後で私が知りたいこと全部、答えてくれるはずだ。
……そう思うのに、不安で仕方ないよ~!
「コーヒーありがとう。とりあえず、お前もここ座れ」
「へっ?」
課長からの意外な言葉に驚いて、私は間抜けな声を出してしまった。
「いえ……おふたりの会話に私が交じるのは……」
「どうせこいつ、俺の親に頼まれて俺の仕事ぶりとか探りに来ただけだから。それなら俺の口から話すより、部下のお前が話してくれた方がいい」
「あら、失礼ね。数年ぶりに再開した幼なじみに向かって」
幼なじみ、という言葉に思わずドキッとする。
幼なじみということは、課長の昔からの知り合いということで……。
私の知らない課長をたくさん知っている人で……。
戸惑う私に、千鈴さんは言った。
「私、そんなスパイみたいな真似をしに優くんに会いにきた訳じゃないのよ。でも確かに、普段優くんと一緒に働いている方から見た優くんの話とか、聞いてみたいわ。お時間は大丈夫かしら?」
「は、はい。少しなら……」
「じゃ、ここ座れ」
課長に椅子を引かれ、私は課長のとなりにおず、と腰掛けた。