強引上司の溺愛トラップ
とはいえ。
「エ、エッチは、まだ、そのですね……」
マンションの課長の部屋で、私はしどろもどろになりながら、やんわりと課長の言葉を否定した。
エッチをしたい、と。
私も、きっと課長はそう思ってくれている……と思った上で、マンションに着いてきた。マンションまでの道のりを歩きながら、もしかしたら本当にするかも……と思った気持ちもほんの少しあったのも事実だ。だけど、実際にお部屋に入って、課長に改まってそう言われると、緊張が激しくなって、まだ心の準備が全然出来ていないことに気付いた。
私の言葉を聞いて、課長は少しムスッとしたような、不機嫌そうな表情を浮かべたけど、すぐに「分かった」と言ってくれて、安心した。
でも。
「あーあ、セックスしたかったなー」
「ちょっ!?」
課長が突然、大きめの声でそんなことを言うから、私は戸惑う。
「ゴムもあるのになー」
「課長! 声大きいです! となりの部屋の方に聞かれてしまいます!」
「佐菜からキスしてくれたら声の音量下げる」
「えっ?」
「佐菜の尻、触りたかったなー」
「わー! やめてください!」
私はたまらず、右手で課長の口元を塞いだ。
それはすぐに課長によって剥がされ、私の右手はそのまま課長に掴まれる。
「はい、どうぞ」
意地悪な瞳に、意地悪な笑顔でそう言われ、私の顔が真っ赤になるのを自分でも感じた。