強引上司の溺愛トラップ
私はゆっくりと、課長に自分の顔を近付ける。


でも、なかなか唇を合わせられなくて、戸惑ったまま硬直してしまう。


「ったく、仕方ねーな。手伝ってやるよ」

「えっ? ひゃ……」

課長は右手を私の後頭部に充てると、そのままグッと力をこめた。
私の顔は、唇は、課長の唇スレスレのところで寸止めされている。
顔を後ろに引こうと思っても、課長の右手が私の頭を固定しているから、叶わない。


「ほら、これであとちょっと顔近付ければキス出来るだろ?」

「……っ」

恥ずかしさの限界で、顔が、熱すぎる。多分これ以上は熱くなることが不可能なんじゃって思うほど、熱を帯びた。


逃げたいけど、逃げられない状況。

……いや、私は逃げるためにここに来たんじゃない。
自分の気持ちを、課長の気持ちに重ねるために、来たんだ。


私は、自分の唇をそっと、課長の唇に重ねた。



それはすぐに離したけど、課長がまた、私の後頭部に充てた手に力をこめる。今度はさっきよりも強く。そのため、唇がまた重なった。

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