強引上司の溺愛トラップ
「ありがとう。まだそんなに遅い時間じゃなかったから。あれ? テーブルに置いてあるこのお菓子、何?」

そこには、丸い缶ケースに入った可愛いお菓子があった。中身はクッキーのようだけど、神くんもお母さんも普段こういうお菓子はあまり買わないから、ちょっと不思議に思った。


「それ、店のお客さんがくれたんだよ」

「へぇ。常連さん?」

「いや、この間初めて来た子。凄い美人でさぁ。しかもいい匂いするんだよ。今日もわざわざ俺にクッキー渡しに店まで来てくれたんだぜ。俺に気があるのかなぁ」

そう言って神くんは、そのクッキーをひとつ食べながら、その横に置いてあったコップを手に取り、満足気にお茶を口にした。

神くんにも春が来たようだ。どんな女の子か分からないけど、良かった良かった。



……何となく、神くんが座っているソファのとなりに私も腰掛けた。そして、ゆっくりと、慎重に尋ねた。


「あ、あのさ、神くん……」

「んー?」

「神くんはエッチしたことある?」

ぶはっ!!と、神くんはお茶を吹き出しそうになり、咳き込みながら私を「は?」と見やった。反応が昼間の私とほぼ同じだ。さすが兄妹……。


「な、なにっ、急に」

「い、いやごめん! 何でもない! 何か聞いた私も恥ずかしいや!」

慌てて今の質問を自分自身でなかったことにしようとするけど、神くんは「……まぁ、さすがにあるけど」と答えた。
そ、そうかあるんだ。って、当たり前だよね。お兄ちゃんのそういう話を聞くのは何か恥ずかしいけど。でも、他に相談出来る人もいないし……。
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