強引上司の溺愛トラップ
「ほ、ほんとですか?」

「ほんとだって。嫌がってるのに無理やりする訳ないだろ」


……課長は、この間だって、私のことを思ってそう言ってくれた。
それなのに、私はその言葉をどこか信じ切れていなかったのか、不安な思いをして、今日泊まりに来た。

でも、課長のこの優しい声と表情を目の当たりにしたら、もう不安はない。


こてん、と私は課長の身体に頭を預けた。


「よしよし」

まるで猫をあやすかのように、課長が右手で私の頭をわしゃわしゃと撫でる。

そのことに、私は更に安心した。



「ていうか髪の毛濡れてんじゃん。早くかわかせって」

「は、はい。そうですね」

「あーいい。そこ座ってて」

「え?」

「ドライヤー持ってくる」

そう言って立ち上がってリビングから出ていった課長は、すぐに右手にドライヤーを持って戻ってきた。


そして、ソファの後ろのコンセントにコードを差すと、私の後ろから、私の髪を乾かし始める。


「かっ、ちょ? 申し訳ないのでそんなことしていただかなくても……!」

「何? ドライヤーの音で聞こえない」

「そんなこと、していただかなくても!」

「聞こえない。いいから黙って前向いてて」


……多分聞こえてるよね、とも思ったけど、課長の手が何だか心地よくて、私はお言葉に甘えてしまった……。



この心地よさと、課長が髪を乾かしてくれている、ということに対して、何だか幸せだなぁと思っていると。
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